20年間苦しい思いをしてきた特発性後天性全身性無汗症(以下、”AIGA”)併発型のコリン性蕁麻疹が寛解(完治ではないが症状が収まった状態を保てる)したので、同じ病気で苦しむ方に(あくまで私の個人的ケースですが)、私がどのような治療を行ったのか・またどんな副作用が出たかなどについて情報提供できればと思います。
以前書いたように、コリン性蕁麻疹にも色々なタイプがあり、先生の話しでは今回の治療法で効き目がでるのは私と同系の患者の中でも30%ぐらいとのことですが、原因不明で現時点では確立された治療法もないコリン性蕁麻疹が治る可能性もあると聞いて、皆様も希望を持てるかと思います。
もし私と同様にAIGAを伴ったコリン性蕁麻疹で苦しむ方で、この治療法を試していないようであれば、担当医に相談してみてください。
費用が結構掛かるのと、投与が注射で、アナフィラキシーや副作用がでることがあることから、既存の療法で効果不十分である場合にしか使用できないようですが、昨今は重度の花粉症患者への投与も保険適用となり、特発性の蕁麻疹も適用可能な症状に含まれていることから、ちゃんと順をおえば、試すことは可能そうでした。(※人によって症状に差がありますので、必ず担当医の判断に従うようお願い致します。)
当該記事を読んで一人でも多くの方が選択肢としてこの治療法があり、その機会を得て、うまく効けば寛解し、QOLの高い生活に戻れることを祈っております。
ゾレアの治療法とは(特発性の慢性蕁麻疹の際の治療法)
ゾレアはそもそもアレルギー性喘息の治療の為に開発された薬で、アレルゲンに対する感受性を低下させることを目的として開発された薬です。それが、特発性の慢性蕁麻疹(2017年より保険適用)や花粉症(2020年より保険適用)にも効き目があることから、当該患者に対してもこの治療法が用いられるようになりました。
具体的にどのように機能するかですが、ゾレア(別名:オマリズマブ)は蕁麻疹の原因となる肥満細胞(マスト細胞)に直接作用し、原因の一つと考えられるIgEを抑え、ヒスタミンなどの炎症性メディエーターの発現を抑制してくれます。
肥満細胞にIgEが結合すると肥満細胞からヒスタミンなどの炎症性メディエーターが漏れ出し、それが肌を赤くしたり腫れさせたり痛痒みを発生させたりするので、IgEが肥満細胞の受容体に結合するのをブロックすることのようです。⇒以下のサイト内の図参照(http://www.xolair.jp/pt/csu/treatment/)
(ちなみに、ゾレアは一般的な抗ヒスタミン薬やステロイド薬とは異なり、既に起こっている症状を速やかに軽減する薬剤ではありません。)
処置としては、ゾレアを皮下注射します。私の場合は腕の他、お尻やお腹でも良いがどこが良いかと聞かれましたが、腕にしました。左右両方の腕(上腕二頭筋の外側)に1本ずつ打ちました。皮下注射するゾレアの量は、症状の具合や患者の体重によってきまり、概ね2週間に1回か、4週間に1回のサイクルで3か月~4か月ほど試して効果をみるという流れとのことでした。
私自身の容量は確認中ですが1か月に1回を3か月(3回か4回)行うということで、一回目の投与量はお恐らく300mg(片側150mgずつ2本)だったのではと思います。(以下のサイトに慢性蕁麻疹の場合の容量が記載されています。)
https://drs-net.novartis.co.jp/dr/products/product/xolair/urticarial/moa/
ゾレアを受ける前提条件とその副作用
ゾレアは副作用(アナフィラキシーを含む)を発生させる可能性があり、また注射薬であり痛みを伴うことから、条件をクリアした患者のみこの治療を受けることができるというガイドラインが設けられています。⇒こちらに製薬会社がわかりやすく説明しています。(http://www.xolair.jp/pt/csu/administration/)
特発性の慢性蕁麻疹としてゾレアの治療を受けるためには以下の4点が求められます。
- 今までの治療で効果が不十分だった
- 12歳以上である
- 蕁麻疹の原因が不明である
- ゾレアに対する過敏症の既往がない
(※なお、妊娠中および授乳中の女性は、必ず主治医にご相談ください。とのことです。)
私の場合、別の記事でも書いた通り、一度目のステロイド・パルス療法の前に様々な検査をして難病指定された特発性全身性後天性無汗症の診断を受けており、原因不明は判明しており、また抗ヒスタミン剤やステロイド・パルスでも殆ど改善が見られなかった為に「今までの治療で効果が不十分」と認定され、他の条件も問題ないことから、次の治療法としてゾレアの皮下注射を勧められました。
この点、こちらを読んだ方の中には、症状が酷くQOLが低いために一刻も早くゾレアを試してみたいと思うかもしれませんが、ガイドラインまで設けられているので、その点担当医とよく相談してみてください。
医者としてもできる限り患者に負担が掛からない治療法で抑え込めればその方がよいという考え方(※)があり、まずは抗ヒスタミン剤を飲むことを勧められますが、辛抱強く順を追ってゾレアまでたどり着いて頂ければと思います。
※そもそも特発性の蕁麻疹の薬物治療手順は「蕁麻疹診療ガイドライン2018」の中で4つのステップを取ることが規定されており、医者は基本これに従うということを念頭に対話をすると良いかもしれません。下記サイトの「特発性の蕁麻疹の薬物治療手順」の欄参照。
https://drs-net.novartis.co.jp/dr/products/product/xolair/urticarial/guideline/
さて、このゾレアの副作用についてですが、最も重大な副作用はアナフィラキシーとなります。これは全身に起こる急性で強い免疫反応であり、以下のような症状が発生した場合にはアナフィラキシーの可能性があるため、ゾレア投与後の注意は医師や看護師の指導によく従う必要があります。
- 気管支のけいれん
- 呼吸困難
- 血圧低下
- 失神
- 全身の発疹
- 全身のかゆみ
- くちびる、舌、のどの奥の腫れ
私の場合、注射後30分は必ず待合室にて待機することと、その後の30分については病院内から出ず(お会計などに行くことは可)、最後は皮膚科に戻り声掛けすることを告げられ従いました。
特に当日病院では副作用と思われる症状は一切なかったですが、2時間経ったあとに発生することもあるのでと緊急時の連絡先を渡され、今までにないほどに厳重な指導を受けました。
(このポイントから、当該治療法はアナフィラキシーを含む副作用の発生確率が高く、特に注意深く取り扱う必要があると推察します。)
結果として私は、当日は特に目立った副作用もみられませんでしたが、翌日以降左の後頭部耳の後ろあたりが日中痛く、その痛みは2週間ほどずっと続きました。一応ゾレアの副作用として頭痛の事例はあるようなので、おそらく副作用だったものと思っておりますが2週間も経つと自然に消失しました。
2021年4月中旬に二度目のゾレア注射を予定しておりましたが、その時点で症状が綺麗さっぱり収まっていることと、頭痛の副作用があったことから二回目の注射を保留させてもらいました。
ゾレア注射後の症状の変化
症状については、注射した初日・二日目はシャワーを浴びた際に少々ピリピリする疼痛が背中でみられたものの三日目ぐらいからは殆ど症状が出なくなりました。ただ症状が完全になくなったというわけではなく、これまで同様、身体が熱くなるにつれて掌も火照り、チクチクの疼痛が発現しそうな不快感は前と同様に発生しました。が、、、その後のピリピリが来ないのです!!!
たまたまその日が調子が良いだけかなと、別の日は家の中で自転車をこいでみましたが、通常であれば漕ぎ始めて5分もすれば太もも、腕の外側などチクチク痛痒くてたまらないはずが、、、起こりません!!!
最近の気温が暖かいことや、直近よく汗をかいていたことが良かったのかとも思いましたが、結局注射後の1か月間、疼痛が発生したのは、急激にひやっとした時と、暑すぎた時のみでした。またその際の痛みの度合はほんの微かなものでした。
1か月が経過し、診察で担当医と話しましたが、こんな一回の注射で効いた話はあまり聞いたことがないとのことでした。
通常は3か月の間に3回~4回の注射をして様子を観察するのが一連の処置と決まっているため、2回目の注射を保留にしたいというこちらの希望には難色を示されましたが、理由が頭痛の副作用があるのでという事でできるだけ回数を減らしたいと告げたところ認められました。
ですので、結局のところこれまで1回の注射しか打っておりませんが注射から40日ほど経ちますが、現時点で症状はでない状態が続いています。
先生によればゾレアの一度の注射の効果は1か月~2か月程度程度とのことで、もう少しすると効果も切れてくるのかもしれませんが、その場合には再度二度目の注射をうち効果を確認できればと思っています。その辺はまた後日、状況をこちらのブログ内で更新できればと思っています。
最後に(所感)
20年間も苦しめられてきた症状が注射一本で収まったのには、驚きとともにもっと早くこの治療法の存在と可能性を教えてくれれば良かったのにと憤りすら感じました。
特に今回ゾレアを提案してきた先生はいつもの担当医ではない先生(非常勤医だがその道の専門の先生)が診察をしてくれた時で、その先生だったからこそその提案が出てきたのではと思うと幸運だったと思います。非常勤の先生のゾレア注射を勧める記事⇓をご参考まで。
https://www.zakzak.co.jp/lif/news/191029/hea1910290002-n1.html
それがこちらのブログを書くに至った理由です。私はたまたま運よくこの先生に勧められましたが、基本先生方はこの治療を知っていたとしても、安全面の観点から、すぐにしましょうとは提案してきません。
しかし患者としてはQOLを相当低下させるこの疼痛は生活への影響が大きく、最低でもこの選択肢があることはもっと早めに知るべきでした。(知っていれば先生とも相談でき効率的に治療を進められた為)
こちらのブログを読んでくださった皆さんはその選択肢の存在を知ることで、早期にこの治療を受けれるように先生と進めることも可能かと思います。
コリン性蕁麻疹といっても様々なタイプがあり、ゾレアが効かない方もいるとは思いますが、少なくとも私には効いたので同様の類型の方(AIGA併発型と言われている方)は効く可能性があると考えて良いかと思います。
作用機序を考えれば、コリン性蕁麻疹だけでなく他の原因不明の蕁麻疹の方もヒスタミン等の発現を抑えることで蕁麻疹を発生させなくできるかもしれません。そのような形で蕁麻疹で苦しむ方が1人でも多く早期に寛解に導かれ、他人の目を気にすることなく、通常生活を送れることを祈っております。
今回の処置に掛かった費用については別の記事にしたいと思いますので、また来訪頂ければ有難いです!