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【病型確認が必ず必要と理解できる!】コリン性蕁麻疹の病型分類と病型別治療法

monshin

コリン性蕁麻疹を患ってる皆様は、コリン性蕁麻疹にも幾つかの病型があることは知ってますか?また自分がどの病型に分類されるのか理解して治療を行ってますでしょうか?

筆者はずっと“コリン性蕁麻疹”というのは1つの病気で、これを患っている人たちは皆一律チクチク痛くて同じ症状が出ていて、治療法も同じなのだと思っていました。

しかし昨今色々調べているうちに、コリン性蕁麻疹もその症状から幾つかの病型に分かれ、それぞれの病型ごとに治療法も全く異なることを知りました。

「治療法が全く異なる」ということは、病型にあった治療をしなければ全く意味がないし、場合によっては治療と思って行ったことが悪い影響を及ぼすこともあることから、今回はその病型の違いとそれごとの治療法について書きたいと思います。

ただ筆者は医者ではないので、ここでは調べて得られた情報のまとめにとどめ、最終的には皆様が病院にて病型確認の検査を受け、病型にあった治療を受けて貰うことを促す記事にしたいと思います。

お時間ある方は読み進めて貰えればと思います!

コリン性蕁麻疹の病型分類について

コリン性蕁麻疹は、その病態がいまだ謎につつまれ、病型についても諸説ありますが、昨今の研究では大きく3つの病型に分けられる整理がなされていると理解しています。

一つは①汗アレルギー型、二つ目は②毛包一致型、三つ目が③減汗・無汗型です。

各種論文や記事をもとにそれぞれの病態を以下の表に纏めてみました。
それぞれの病型ごとにみてみましょう。

  ①汗アレルギー型
(毛包非一致)
②毛包一致型 ③減汗・無汗型
≒ AIGA(IPSF)
  血管性浮腫伴う
発生機序の説 汗管閉塞説・
汗アレルギー説
不明(何らかの血清因子に反応) Ach受容体発現
低下説
症状 掻痒・疼痛 掻痒 掻痒
ちくちく疼痛
皮疹の場所 エクリン汗腺
開口部
毛包 エクリン汗腺
開口部
検査 自己汗皮内
テスト
陽性 陰性
自己血清皮内
テスト
陰性 陽性 陰性
発汗テスト 発汗低下ない 発汗低下・無汗
傾向 性差なし
夏に増悪
女性に多い
アトピー素因
夏に増悪
性差なし 若年男性に多い
冬季に悪化
発汗すれば改善
日本人に多い
精神性発汗は保持
備考   アナフィラキシーを伴うことが多く症状が重篤   発汗改善部位に蕁麻疹&疼痛が発生

汗アレルギー型

自分の汗の成分にアレルギー反応を起こして蕁麻疹を発症するタイプです。

汗が真皮内で汗管から漏れ出し、汗中のアレルゲンに反応して肥満細胞の脱顆粒(ヒスタミンなどアレルギー反応を引き起こす化学物質を放出)を引き起こすと考えられています。

このタイプは自己汗皮内テスト(自己汗または汗を希釈した溶液を皮内に注射して反応をみる)が陽性となり膨疹がエクリン汗腺開口部に発生します。

また、このタイプの中には血管性浮腫(まぶた、唇、気道などが腫れる)を引き起こしたり、重症例ではアナフィラキシーショックを引き起こしたりする、アトピー素因の女性に多いタイプがあり注意が必要な病型となります。

②毛包一致型

汗アレルギーが軽度(自己汗皮内テストでは膨疹は発生しないことが多い)の中に、自己血清皮内テスト(自分の血液から採取した血清を皮内に注射して反応を見る)が陽性となるタイプがあります。

発生機序等は不明ですが、自分の血液中の何らかの血清因子に反応していると考えられています。

自己免疫性の蕁麻疹と考えられ、皮疹の発生する場所が毛包(毛穴)と一致することから「毛包一致型」と呼ばれるのがこの病型となります。(①及び③のタイプでは、皮疹はエクリン汗腺開口部に発生する点で相違。)

③減汗・無汗型

①や②の病型のような汗アレルギーは有さず、全身から全く汗がでなくなったり、汗をかきづらくなったりする症状を伴う「減汗性コリン性蕁麻疹」と呼ばれる病型です。

発生機序としては発汗時に交換神経終末より分泌されたアセチルコリンを通常受け止める、汗腺上皮細胞の受容体(ムスカリン受容体の1つであるM3受容体)の発現が低下し、受容体と結合できず行き場を失ったアセチルコリンが、汗腺周囲の肥満細胞の受容体と結合し脱顆粒する(ヒスタミンを放出する)と考えられています。

この病型では痒みよりもむしろチクチクする疼痛を伴うケースが多く、若年男性、特に日本人に多く、冬季に症状が悪化するという傾向があります。

ちなみに神経内科領域においては原因不明の後天性の無汗症を特発性後天性全身性無汗症(acquired idiopathic generalized anhidrosis:AIGA)と呼んでおり、このAIGAの中でも、特にある特徴をもつ群を埼玉医科大の中里氏が特発性純粋発汗機能異常症(idiopathic pure sudomotor failure:IPSF)と提唱し、その一部にコリン性蕁麻疹や疼痛を伴うものが存在すると論じています。

減汗性コリン性蕁麻疹もIPSFも、患者の傾向や症状、治療法に共通点があることから、両疾患は同じスペクトラム上にあると考えられています。(筆者からみると、皮膚科と神経内科でそれぞれの立場で研究が進んでいるだけで、両疾患はそもそも同一の病気なのではと思いますが、、、「同じスペクトラム上にある」と整理しているようです。。。)

上記より、減汗性コリン性蕁麻疹の患者はAIGA(やIPSF)を患っている事が多く、この記事上では「≒」で表記しております。

病型分類別治療法について

続いて、それぞれの病型別の治療法について以下の通り表に整理しました。
それぞれの病型別に治療法をみていきましょう。

  ①汗アレルギー型
(毛包非一致)
②毛包一致型 ③減汗・無汗型
≒ AIGA(IPSF)
  血管性浮腫伴う
抗ヒスタミン剤
(H1拮抗薬)
有効だが限定的。
抵抗性を示すことも有り
効かないor効きにくい ほぼ効かない
(有効例もあり)
H2拮抗薬の併用 試す価値あり 不明 試す価値あり
抗コリン剤/抗ロイコトリエン薬/タナゾールの併用 試す価値あり 不明 不明
自己汗減感作療法 試す価値あり 効かないor効きにくい 効かない
ステロイドパルス × 試す価値あり
オマリズマブ注射
(ゾレア)
試す価値あり 不明 不明
入浴・運動等による発汗促進 注意が必要 不明 試す価値あり
マラセチアの分泌するMGL-1304の除去・汗抗原の脱感作療法 試す価値あり ×
漢方薬(柴苓湯、桂枝麻黄各半湯等) 試す価値あり 不明 試す価値あり

①汗アレルギー型

この型はアレルギー反応で起こる一般的な蕁麻疹と同様に抗ヒスタミン剤が有効なケースが多いです。ただ、中・重症者や血管性浮腫を伴う型では治療抵抗性を示す(=効かない)こともあり、その場合には抗ヒスタミン剤の量を倍増したり他の薬剤(H2拮抗薬、抗コリン剤、抗ロイコトリエン薬、タナゾールなどに有効例)の併用を試すことになります。

そのほか、自己汗や精製汗抗原に対する減感作療法(アレルギーの原因物質(抗原)を少しずつ身体に投与することで慣らさせる療法)やオマリズマブ注射にも有効例がでています。

また、昨今の研究では皮膚表面に常在するマラセチア菌の分泌するたんぱく質「MGL-1304」が汗に溶けて皮膚にしみこむことでアレルギー反応が起こっているという説もあり、タンニン酸や竹酢で除菌・静菌を行ったり、抗原の脱感作療法(抗原を少しずつ投与することで過敏性を除去する療法)を行うことも治療の選択肢になっています。

一点、運動や入浴による発汗促進も症状に改善がみられるとして勧められることがありますが、汗アレルギー型の患者には、アナフィラキシーショックの可能性が否めないため、エピペン(アナフィラキシー補助治療薬)の入手などを含め、医者と相談の上で注意しながら行うことが必要です。(筆者としては、アナフィラキシーショックの可能性がある以上、①アレルギー型の方に発汗促進は勧めるべきでないと思っていますが、発汗を勧めている記事・文献を見かけることが多いのでご注意ください!)

②毛包一致型

毛包一致型の治療法については論文・文献が殆どなく、抗ヒスタミン剤も効きにくいようで、情報を得られませんでした。

そもそもあまりこのタイプのコリン性蕁麻疹に苦しむ患者をみかけることもないことから症例も少ないのかもしれません。

こちらはまた情報を得ましたら更新させて頂きます。(また、治療法が書かれた文献あればお知らせくださいませ。)

③減汗・無汗型

減汗・無汗型の治療法についてですが、(軽症者に有効例が見られたとのことで、)この型においてもまずは最初の治療として抗ヒスタミン剤を試すケースが多くなっています。

一方で、③のコリン性蕁麻疹は①の汗アレルギーの病型とは全く異なる発生機序であると考えられ、この型の患者には抗ヒスタミン剤は効果がみられないケースが多いです。

それでも医者から①と同様に抗ヒスタミン剤やH2拮抗薬、抗コリン剤、ダナゾールなども試すことを勧められるのは、次に記載するステロイド・パルス療法が多くの副作用をもちリスクが高い為で、薬の服用で効けばステロイド・パルス療法を回避できることや、万が一でも効けば有効例を積み上げられるという臨床試験的な観点での処方になっていると筆者は推察します。(でも実際には殆ど効かないので無駄が多い)

抗ヒスタミン剤等の処方で効果がでない場合には、ステロイド・パルス療法が検討されます。

ステロイド・パルス療法とは、1グラムのステロイド(メチルプレドニゾロン)を3日間連続で点滴することを1クールとして1~3クール行う治療法のことで、減汗・無汗型のコリン性蕁麻疹の患者では特に発症から期間の短い患者において症状が改善したケースが多数あります。

ただし、ステロイド剤は免疫や炎症を強力に抑える為よく効く一方で、沢山の副作用をもたらす薬であり、実施には細心の注意が必要になります。
(ステロイド・パルス療法と副作用については、入院時の体験で詳細記載してますのでこちらください。)

また、副作用のリスクをとって治療を行っても、患者によって(発症からの期間が長い人ほど効きにくいというデータ有り)効果が全くでない、もしくは効果が治療後数日できれてしまうケースも散見され、必ず完治・寛解する治療法としては確立していないことを理解した上で実施するかどうか決定を下す必要があります。

その他の治療法としては入浴・運動による発汗促進や漢方薬で症状が改善する例もみられており医学的には解明されていないものの、この③減汗・無汗型の患者には発汗促進をすることで、症状が抑制されたり改善されたりするケースがよく見られており、手軽で効果の高いおススメの治療法となっています。

まとめと考察(最も大事な事)

以上、3つの病型について2020年2月時点で筆者が入手できた情報をもとに病態と治療法を纏めてみました。

ちなみに筆者の病型はといえば、、、③減汗・無汗型のコリン性蕁麻疹です。自分がそうだったこともあり、コリン性蕁麻疹といえば③で、全ての患者がチクチクする疼痛に苦しんでいるものと思っていました。

しかし、時折コリン性蕁麻疹でも明らかに自身の症状とは異なる症状の話しを耳にすることがあり不思議に思っていました。例えば、(筆者はチクチクの疼痛メインですが)チクチクの疼痛がなく痒みだけの方がいたり、(筆者は殆どでない)膨疹が激しい方がいたり、(筆者は20年間無理やり汗をかいていても起こっていない)血管性浮腫やアナフィラキシーショックを起こす方もいたりするようで、随分違うなと思っていました。

今回自身が運動中に汗をかけなくなっていることに気づき、③の病型のコリン性蕁麻疹であることに辿り着いたことで、そのことを調べているうちにコリン性蕁麻疹には①や②の病型もあることを知り、腑に落ちました。上記で書いた私にない症状は全て①の汗アレルギー型の病型の症状でした。

このように大きな違いがあるにも関わらず、世の中にはコリン性蕁麻疹について全ての病型を一つの病気として病態や治療法をごちゃ混ぜに書いている記事や文献が多く(といいますか、ネット上の記事は殆どそうです)、汗アレルギーの病型の方にアナフィラキシーショックの危険性を周知するとともに、自身がまだどの病型かわからない方にも注意喚起したく本記事を書くに至りました。

上記踏まえ、筆者がここで最も訴えたい事は、「コリン性蕁麻疹は自己判断せず必ず病院で検査をして、自分の病型を知り、その病型にあった治療法を選択することがとても大事」ということです。

繰り返しになりますが、①の汗アレルギー型の場合には、血管性浮腫やアナフィラキシーショックを引き起こすケースがあり、これは喉や鼻の粘膜が腫れた場合、呼吸困難で死に至る可能性まであります。

にも拘わらず、減汗・無汗型をベースとした記事や文献の中には病型に触れることなくコリン性蕁麻疹の方は入浴や運動(さらに場合によってはサウナ)での発汗トレーニングをしましょうと促しているものもあり、自分の病型を知らない汗アレルギー型のコリン性蕁麻疹の方が、これらを試して危険な目にあってしまうという可能性があります。

そのような出来事が起こらないように、「コリン性蕁麻疹はまず検査で病型を確認することが大事」と皆様が理解し、病型にあった適切な治療を受け、少しでも多くの方の症状が改善して、ストレスない日々をおくれるようになることを祈っています。

最後までお付き合い頂き有難うございました。

<参考文献>

●「第80回日本皮膚科学会東部支部学術大会③ 病型分類別のコリン性蕁麻疹の治療方針」 神戸大学大学院皮膚科 講師 福永淳 セミナー資料

●「第67回日本アレルギー学会③ 刺激誘発型蕁麻疹と乏汗症」 青島皮膚科医院 院長 青島 正浩 セミナー資料

●コリン性蕁麻疹の病型分類と汗 発汗学 25(2): 37-41, 2018.

神戸大学大学院医学研究科内科系口座皮膚科学分野 鷲尾健

●皮膚科 減汗性コリン性蕁麻疹の病態と治療 浜松医科大学皮膚科学教授 戸倉新樹

日本医事新報 (4925): 60-60, 2018.

●天理よろづ相談所病院 総合内科 作成者シニアレジデント1 土橋直史 資料

●東京医科歯科大学皮膚科教授 横関博雄 インタビュー記事

●減汗性コリン性蕁麻疹の新しい発症機序 浜松医科大学皮膚科学 戸倉新樹

皮膚アレルギーフロンティア 12(2): 85-114, 2014.

●減汗性コリン性蕁麻疹とAIGA 浜松医科大学皮膚科 戸倉新樹

発汗学 25(1): 2-5, 2018.

●特発性後天性全身性無汗症 - 皮膚科の立場から : 皮膚生検含め -防衛医科大学校皮膚科 佐藤貴浩

発汗学 23(suppl): 21-24, 2016.

●コリン性蕁麻疹と減汗症の性差 浜松医科大学皮膚科学講座助教 青島正浩

皮膚アレルギーフロンティア 13(3): 147-176, 2015.

蕁麻疹・血管性浮腫 パーフェクトマスター 秀道広/専門編集 中山書店

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